Q1:温州(うんしゅう)ミカンの原産地は?
Q2:「ストレートジュース」「濃縮還元ジュース」「果実入り飲料」の違いは何でしょう?
Q3:トンボが縁起物として「勝ち虫」と呼ばれているのはなぜでしょう?
物語
1本3,000円のミカンジュース
ここでご紹介するのは、720mlで3,000円(税込)のミカンジュースです。自分用に買うには少しためらう人も多いと思いますが、この価格には理由がありました。
そもそも「ミカン」とは、ミカン科ミカン亜科ミカン属のうち、ミカン区に属するかんきつ類の総称です。
ミカンのなかには温州(うんしゅう)ミカン、紀州ミカン、ポンカン、タチバナなどがありますが、これらのうち、一般に日本でミカンとして親しまれているのは温州ミカンで、かんきつ類の生産量では70%以上を占めます。
温州ミカンの原産地は、じつはインドのアッサム地方だとされています。そこから中国を経て、日本に伝わったようです。「温州」とは、かんきつ類の産地だった中国の浙江省(せっこうしょう)の地名です。
日本に初めて伝わったのは鹿児島県で、中国から伝わったかんきつ類が、偶然地面に落ちて育ったとされています。ちなみに、そのように育った実のことを偶発実生(ぐうはつみしょう)といいます。温州ミカンだけでなく、はっさく、日向夏、二十世紀(ナシ)、ゴールデンデリシャス(リンゴ)など、古くから栽培されている果物の多くがこのように生まれた果実だといわれています。
「山北ミカン」とは
こうして生まれた温州ミカンのうち、高知県の狭小な農地、山北地域(香南市香我美町山北)で育てられたものが「山北ミカン」です。外皮が薄く、ほどよい酸味と甘みのバランスを持っているのが特徴です。高知県の特産品の1つとして、おもに県内で販売されています。
山北ミカンの生産量はかなり少なく、全体で700t程度。ちなみに、日本の温州ミカンの年間生産量は約55万tです。
季節ごとに、興津(おきつ)、はちきんキッス、南柑20号など、さまざまな品種の温州ミカンが山北地域で栽培されています。
山北ミカンは、季節によって栽培方法が変わります。春から夏にかけてはハウス栽培、夏から秋にかけては雨よけ栽培(温室の天面は残して側面は取り外す方法)、冬は露地栽培(温室やビニースハウスを使わない方法)という具合に3種類。
また、どの山北ミカンが出荷、販売されるかは、農産物の出荷が始まる前に生産者が集まり、サイズや品質などの出荷基準を確かめ合う目慣らし会や出荷検討会を実施し、品質や味、当年のミカンの出来を確認したうえで決定されます。傷が多いなどの理由で出荷されないミカンは、ジュースなどのになったりするそうです。そのため、同じ山北ミカンという名前で販売されていても、収穫時期によって味が変わります。
存続の危機を乗り越えた山北ミカン
山北ミカンの歴史は、江戸時代の1855(安政2)年、当時の山北村の農家が、温州ミカンの苗木を取り寄せたことから始まります。
栽培が盛んに行われるようになったのは、明治に入ってから。1908(明治41)年、四国地区の果物品評会で全出品作品の70%を占める入賞者を輩出したことで、それまで生産量の少なさからあまり全国的に認知されていなかった山北ミカンが、名声を高めることになりました。
ところが、1974年5月、ミカンの生産過剰に伴い、日本園芸組合農業連合会が生産数を調整することを決めました。これに影響されて、高知県内でもミカン栽培をやめる農家が続出しました。
そこで、山北地域ではミカンのハウス栽培を始め、端境期(はざかいき。新しい収穫期が来る直前のこと)に多く出荷できるような温室ミカンを作ることで、多くの農家がミカン栽培を続けました。
また、山北ミカンの栽培方法やそれに伴う技術などは、農業協同組合と農家との間でも継承されていますが、おもには家族間で継承されています。
このようにして、ミカン農家やその栽培技術が守られてきました。
「香我美(かがみ。地名)」の由来
ところで「香我美町」という地名の由来は「鏡」だったとされています。鏡である理由は諸説あるようです。
1つ目は、香我美町の整えられた水田や、川の清流が、鏡のように見えることからというものです。
2つ目は、近隣にある「鏡岩」が由来だとする説です。鏡岩は物部川合同堰(ものべがわごうどうぜき)の上流にあった岩で、その岩に反射した夕陽で照らされた川が、まるで鏡のように輝いていたという記録が残っています。現在、鏡岩は水没してしまっています。
3つ目の説は、当時は貴重だった鏡の存在からというものです。古来から、鏡は神秘的な力を持つとされていました。香美郡(現在の香南市)の下ノ坪遺跡から、唐式鏡(とうしききょう)である四仙騎獣八稜鏡(しせんきじゅうはちりょうきょう)が出土しています。このことから、鏡という地名がついたのではないかといわれています。
また、鏡が「香我美」という文字になったことにも理由がありました。地方制度が整えられた奈良時代の713(和銅6)年に「郡郷の名前はよき2字にせよ」という命令が下ったことで「かがみ」を2文字で表して「香美」としました。他にも、現在の群馬県にあたる上毛野(かみつけの)、栃木県にあたる下毛野(しもつけの)が、それぞれ上野、下野になった例もあります。香美を「かがみ」と読むのは、奈良から平安時代にかけて、香の昔の読み方である「かう」の子音「う」が「か」に変えられ、国名、郷名に使われていたからだといわれています。
その後、鎌倉時代末期の1306(嘉元4)年に香我美郡(かがみのごおり)と記され、明治維新後、廃藩置県のときに香美郡(かみぐん)とされました。なぜ香美と香我美を行ったり来たりしているのかは分かっていないようですが、平安時代の辞書『倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』には「香美」の読みとして「加々美」が載っていたようです。
地名は調べれば調べるほど歴史があることが分かり、ついつい長くなってしまいました。

同じ「ミカンジュース」でも
それはさておき「エクスクルーシブ山北ミカンジュース」は、香我美町山北地域の温暖な気候で育った高知県産のミカンを、1本につき約13~15個分使用した、果汁100%のストレートジュースです。
このジュースは、ミカンの選果後、すぐに搾汁されて作られています。えぐ味などの雑味が入らないよう、丸ごとではなく、外皮を取り除いて搾汁された後、瓶詰めされます。甘いだけではなく、酸味とのバランスが絶妙で、特有のコクがあるのが特徴です。その甘味と酸味のバランスを崩さないため、加糖などの加工は行っていません。
ところで「ジュース」類の表記は法律で決まっています。
「ストレート」と表記できるジュースは、食品表示基準によると「果実ミックスジュースであって、果実の搾汁のみを使用したもの」とされています。
ちなみに「還元果汁を使用したもの」が「濃縮還元」です。還元果汁とは「濃縮果汁を希釈したもの」。濃縮果汁とは「果実の搾汁を濃縮したもの若(も)しくはこれに果実の搾汁、果実の搾汁を濃縮したもの若しくは還元果汁を混合したもの又はこれらに砂糖類、蜂蜜等を加えたもの」とされています。
つまり濃縮還元ジュースとは、搾った果汁から水分を除去して濃縮し、再び水分を加えて希釈したものです。そのため、一部の栄養素は失われます。
また「果汁入り飲料」は、果汁の割合が10%以上100%未満のもの。「ジュース」と表記できるのは、果汁100%のものだけだとされています。つまり、私たちが日ごろ「果物のジュース」と呼んでいるもののすべてがジュースではないのです。
さて、商品名の「エクスクルーシブ(「限定的な」「唯一の」といった意味)」は、山北ミカンの繊細な味を「特別なもの」と捉えたことから名付けられました。
はたして、1本3,000円のミカンジュースの味は、普段飲むような、スーパーやコンビニ、自動販売機に並んでいるミカンジュースと、どう違うのか……?答えはあなた自身で確かめてみてください。

忘れられない一本の電話
この品物は、2025年(令和7年)2月2日に開催された、第50期棋王戦第一局で、藤井聡太棋士のお昼のメニューの一品として選ばれました。将棋好きの人なら「エクスクルーシブ山北ミカンジュース」という名前を見たことがあるかもしれません。
第50期棋王戦第一局は、高知県高知市の「高知市文化プラザかるぽーと」で行われました。この品物の作り手であるシトラスヘイブン(高知県)は「おやつ・ドリンク協賛」として出店販売に参加する予定でした。
藤井聡太棋士が対局の前日にお昼のメニューを決定し、もし「エクスクルーシブ山北ミカンジュース」が選ばれれば新聞社からシトラスヘイブンに連絡が来る予定でしたが、その連絡は来ませんでした。そのため、選ばれなかったと思い、一時は落胆したそうですが、当日は気持ちを切り替え、出店販売に向かいました。
ところが、向かっている途中で、関係者から「お昼のメニューの一品として選定されました」と連絡が入ったのです。
突然の逆転劇に、シトラスヘイブン代表の土居哲也さんは、学術顧問と2人で思わずガッツポーズをしたそうです。「山北の農家さんも本当に喜んでくれて、一生の思い出になるほどうれしかったです」と語っていました。

デザインに注目してみると、トンボが止まっている絵があしらわれていることに気づきます。これには、トンボが「勝ち虫」ともいわれており、縁起物として扱われていることが関係しています。トンボは前にしか進まず、後戻りをしないことから、不退転の精神を表すとして、特に戦国時代の武士にありがたがられ、武具などの意匠に使われていました。そんなトンボをあしらい、贈答用にも向いたデザインにしています。
山北ミカンのブランド化を目指す理由
シトラスヘイブンは、高知市街地を一望することのできる五台山(ごだいさん)で、日本の高い技術と高品質な農林水産物の価値を明らかにすることを目標に、ジュースやエッセンシャルオイルなどの生産、加工、調達、卸事業を行っています。
代表の土居さんに、商品を開発したきっかけを聞きました。「地域に根差したどこにも負けない山北ミカンの魅力を、より多くの方に、日常の中で手軽に味わっていただきたい」という思いから、ジュースのブランディングをスタートしたそうです。
土居さんは、山北ミカン農家が減少しつつある近年の状況を鑑みて、山北ミカンを日本に誇れるブランドとして確立し、認知度を高めることで、新規就農者に魅力を伝え、ミカン農業の担い手を増やしたいと考えているそうです。
商品作りを振り返るうえで、土居さんは「ミカンは時期によって甘みと酸味のバランスが異なるため、1年を通して土壌管理やせん定、水分の調整など、受け継がれてきた技術を用いて、水準以上のミカンを作り続ける農家さんが、自分よりも苦労されていると思います」と語っていました。一次産業に携わる人々への敬意と、山北ミカンの魅力を広めたいという姿勢が、よく表れている言葉だと感じます。
最後に
現在、一次産業の担い手は減少傾向にあります。ミカン農家も、山北ミカンに限らず、全国的に減少しているようです。農林水産省による調査では、2024(令和6)年産のミカンの樹面積は34,500haで、前年産に比べ900ha減少したとされています。そんななかでも、農家やシトラスヘイブンのようなメーカーが、生産技術の継承やブランディングを行っています。
現在「エクスクルーシブ山北ミカンジュース」は、地域の農業と連携した小規模製造の体制でありながらも、口コミやギフト需要を通じて、販路が徐々に拡大しているそうです。高知の恵みを全国へ届けたいという思いで、シトラスヘイブンは今も事業に取り組んでいます。
山北ミカンの持つ歴史や、注ぎ込まれた技術を、味とともに感じられるでしょうか?
シトラスヘイブンからのメッセージ
来期以降はより選りすぐりのエクスクルーシブ山北ミカンによる限定ロットも検討中です。また、ミカン果皮を活用した加工品など、資源を無駄にしない取り組みにも挑戦したいと考えています。
温州ミカンは、鹿児島県長島が原産とされる柑橘のミカンです。山北に導入されたのは1662年以降とされ、記録に残っているのは1855年、その山北の苗木が愛媛をはじめ全国に広まり、温州ミカンの広がりを支えた歴史があります。いわば、ミカン文化の「原点のひとつ」がここ山北にあるのです。
山北ミカンはすべてが水準以上ではありますが、収穫時期によって味に繊細な個性が現れるため「今年の味」として毎年楽しみにしてくださるお客さまがいらっしゃいます。
「やはり山北は違うね」「冬の楽しみができました」などのお客様のお声は、何よりの励みです。
この地で代々受け継がれてきた技や思いを、ぎゅっと詰め込んだのが「エクスクルーシブ山北ミカンジュース」。
毎日の暮らしのなかで、その一杯から、土地の記憶や人の思い、ほんのひとときの「豊かさ」を感じてもらえたらうれしいです。高知・山北ミカンの季節の味わいを、ぜひご堪能ください。
お召し上がり方
おすすめのお召し上がり方:開栓には栓抜きが必要ですので、ご用意ください。
金色のフィルムを剥がすと、再栓用の白いふたが出てきますが、固定されていないので、フィルムを剥がしたときどこかに飛ばしてしまわないようにお気をつけください。
シトラスヘイブンにおすすめの飲み方を聞きました。
「朝の目覚めの一杯に、疲れた日のご褒美に、または贈答用にも最適です。
冷やしてそのままでももちろん美味しく、炭酸水で割ったり、カクテルやゼリーへのアレンジもおすすめです。」
基本情報
価格:3,000円(税込)
内容量:720ml
賞味期限:通常、製造日より1年
原材料名:うんしゅうみかん(高知県山北産)
栄養成分表示:100gあたり
熱量:41kcal
たんぱく質:0.5g
脂質:0.1g
炭水化物:10.6g
塩分量:0g
保存方法:直射日光を避けて保存してください。
A1:インドのアッサム地方です。
A2:ストレートジュースは、果実の搾汁のみを使用したもの。濃縮還元ジュースとは、搾った果汁から水分を除去して濃縮し、再び水分を加えて希釈したもの。果汁入り飲料は、果汁の割合が10%以上100%未満のものです。
A3:トンボは前にしか進まず、後戻りをしないことから、不退転の精神を表すとして、特に戦国時代の武士にありがたがられていたためです。
「エクスクルーシブ山北ミカンジュース」についてのお便りやご質問
「エクスクルーシブ山北ミカンジュース」のご感想やご質問、おすすめのお召し上がり方などをお送りください。
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