Q1:いわゆる世界4大文明を、4つすべて答えてください。
Q2:お香作りを担う職業を何というでしょう?「調香師」ではありません。
Q3:淡路島の「淡路」の語源は何とされているでしょう?
Q4:マッコウクジラの「マッコウ」の語源は何とされているでしょう?
物語
なんで今さらお香なの?
じつは、記念すべき初回の2025年10月の定期便の品物に、1つだけ食品ではない「春夏秋冬~FOUR SEASONS~」というお香を選びました。
発見物語でご紹介する品物には、必ずお伝えしたい物語があります。「今さらお香?」と思わずに、最後までこの記事を読んでみていただければと思います。
お香を使う時間が減るということ
現代日本では、お香(線香や匂い袋など)を使う機会は少なくなっています。
それは、1人でゆっくり考えごとなどをして静かに過ごす時間が少なくなった、ということでもあるかもしれません。
この物語をきっかけに、お香と、自分だけの時間を大切にすることについて、改めて考えてみてはいかがでしょう?
お香の歴史
そもそも、なぜお香は使われなくなってきているのでしょうか?
その理由の1つは、お香が宗教的な側面を持つものであることが関係していると考えられます。
紀元前3000年ごろに、チグリス・ユーフラテス川流域で栄えたメソポタミア文明で、お香の原型にあたるものが使用されていたのがお香の始まりのようです。乳香(にゅうこう。ムクロジ目カンラン科ボスウェリア属の樹脂)や没薬(もつやく。カンラン科の樹脂)が、神を祭る祭壇で焚かれたり、香料として輸入されたりしていたといわれています。
やがて、メソポタミアから、エジプトや中国にもお香が広まっていったそうです。ちなみに、世界4大文明は、エジプト文明、メソポタミア文明、インダス文明、中国(黄河)文明とされます。
日本では推古3(595)年に、淡路島に香木(沈香)が漂着したという記述が『日本書紀』に見られます。その木が良い香りがするものだと知らなかった当時の島民は、通常の薪と一緒に香木を燃やしました。すると、良い香りがしてきたので、不思議に思って朝廷に献上した、といったことが述べられています。
これに加えて、仏教の伝来に伴い、祭儀用の香木が持ち込まれたことにより、日本でもお香が普及していきました。
ちなみに、香木伝来、および伝承の地として、淡路島にある枯木(かれき)神社では、御神体として大きな香木(枯木)が祀られています。
現代では、仏教が生活に関わることは少なくなったのではないでしょうか。お寺や神社に参拝したり、初詣に行くことはあっても、仏教のおもな年中行事をすべて行っている、という人は、そう多くないと思います。
仏教が日常から遠ざかるにつれ、お香(線香など)を使う機会も少なくなったといえるでしょう。
また、現代の手軽な娯楽に比べると、お香を使うのには手間がかかるのも、お香が使われなくなった原因なのかもしれません。
お香を使うには、お香立てや、風通しのいい広い場所などを準備しなければなりません。落ち着けるのは、お香に火をつけたあとです(お香を焚くときは、その場を離れず、周囲に十分に気をつけてご使用ください)。
お香を使うのには、比較的時間がかかるのは確かです。しかし、あえてその「時間がかかる」ことを楽しむ使い方を、発見物語では提案します。
たとえば、お香は、ただ燃えているわけではなく、香りを発しています。そこで、お香が燃えている間は、ほかのことを一旦忘れて、香りだけに集中してみる、というのはいかがでしょうか?
時間を止める魔法
一般的に、香水などと違って、お香の香りはどちらかというと穏やかなもの。集中しないと、香りを堪能できません。
ちなみに、このように、今、目の前で起きていることや、自分の身に起きていることだけに集中できている状態を「マインドフルネス」と呼ぶ人もいます。
また「あと何分」「何時まで」といった、人間が決めた時間の尺度を一旦忘れて、自分の五感を頼りに「お香が燃え尽きるまで」「匂いがなくなるまで」と考えてみるのも、お香のおすすめの楽しみ方の1つです。
時間を止める魔法はありません。ですが、社会的な時間を止めることは、お香を使えば可能だといえるかもしれません。
人体に対する香りの影響
さて、五感のうち嗅覚は、ほかの4つとは明確に違う点があります。それは、ほかの4つが、脳の「大脳新皮質」に伝達されるのに対して、嗅覚は「大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)」に伝達される、という点です。
大脳新皮質は、言語、思考、判断、計算などに関わっています。一方、大脳辺縁系は、情動、記憶、自律神経などに関係します。大脳新皮質は理性的、大脳辺縁系は本能的といえるかもしれません。
特定の香りを嗅ぐと、その香りに関する記憶が鮮やかによみがえるのはプルースト効果といいますが、これも嗅覚が大脳辺縁系につながっていることに関係しています。
ちなみに、嗅覚が大脳辺縁系につながっているのは、暗闇など、視覚が使えない状態でも、匂いを瞬時に察知して、危険から身を守るためだとされています。
春夏秋冬をモチーフに
ここでご紹介する「春夏秋冬~FOUR SEASONS~」には、春夏秋冬をモチーフに、桜、ラベンダー、金木犀、水仙の香りが使われています。
これらの花の香りは、人体にどのような影響があるでしょうか?
まずは桜について。じつは、咲いている桜の花からは匂いはしません。ですが、桜の塩漬けや桜餅の葉からは甘い香りがします。この香りは「クマリン」という成分が元になっています。クマリンは通常、花や葉の中では、糖と結合した「配糖体」という状態になっています。ところが、花や葉が塩漬けにされたり強く揉まれたりすると、糖が分離してクマリンが生成され、甘い香りを放つようになります。クマリンには、リラックス効果や鎮静作用があるとされています。
次はラベンダーについて。6~7月に咲くラベンダーの主な芳香成分は、酢酸リナリルとリナロールです。この2つには、神経を鎮め、心身の緊張をやわらげる効果などがあるといわれています。
また、9~10月に咲く金木犀の主な芳香成分はβ-イオノン、リナロール、γ-デカラクトン、ゲラニオールです。このなかでもβ-イオノンは、スミレの精油などにも含まれる甘い香りの精油成分で、秋に金木犀の近くを通ると甘い匂いがする理由の1つは、この物質です。ちなみに金木犀の香りには、鎮静、抗不安、安眠効果などがあるとされています。
最後に、11~4月に咲く水仙。水仙は品種によって香りの種類が違いますが、主にベンジルアセテート、リナロール、リナリルアセテートなどの成分で構成されています。抗酸化作用、メラニン生成抑制効果、ストレス軽減効果があるそうです。
このように、植物には、香りの元となる化学成分が豊富に含まれ、人の心に働きかける作用があります。
こういった作用を生かした補完療法の1つに「アロマセラピー」があります。植物から抽出したエッセンシャルオイル(精油)を使用し、その香りを吸い込んだり、希釈して皮膚に塗ることで、心身の不調の改善を目指すものです。
アロマが心の不調に効果があるといわれているのは、香りを作っている成分そのものの効果だけではなく、嗅覚が情動を司る大脳辺縁系につながっていることも関係していると考えられます。
淡路の花々を体験できるお香
さて、これらの4つの花の香りを体験できる「春夏秋冬~FOUR SEASONS~」は、線状のお香です。火をつけると、約5分ごとに、桜(春)→ラベンダー(夏)→金木犀(秋)→水仙(冬)と、香りが変わっていくのが特徴です。
このお香の燃える時間は、約20分です。その20分間だけ、時間を忘れて、香りの変化に集中してみてはいかがでしょう?
震災を乗り越え「花と緑あふれる公園島」になった淡路島
この品物が作られたのは、兵庫県淡路市です。2000年3月から、淡路島では「花と緑あふれる公園島淡路」を目指して、花の名所作りが進められています。
淡路島が「公園島」を目指している理由には、過去の震災がありました。
1995(平成7)年1月17日に発生した、阪神・淡路大震災。淡路島北部を中心に、関西や四国などで大きな被害が生じました。震源となった淡路島も、甚大な被害を受けた地域の1つです。
そこで、淡路島は「震災の島」から「花の島」に変わるため、2000(平成12)年3月、公園島づくりの行動指針となる「淡路公園島憲章」を制定しました。この憲章の理念に基づき、淡路花博「フローラ2000」を開催したほか、現在でも「花いっぱいの美しい島づくり」や「魅力ある産業を興す島づくり」を目指した取り組みが行われています。
その取り組みの一環として「あわじ花へんろ」というスタンプラリー企画があります。八十八ヶ所の霊場を巡礼する「お遍路」になぞらえて、2025年現在は七十七ヶ所の花の景勝地や観光施設などが「花の札所」に指定されています。その「花の札所」では「春夏秋冬~FOUR SEASONS~」で楽しめる香り、桜やラベンダー、金木犀、水仙を鑑賞することもできます。
お香作りは淡路の伝統産業
お香作りは、淡路の伝統産業の1つです。淡路島でお香作りが盛んになった背景には、風土や気候的な要因がありました。
江戸時代、淡路の江井(えい)地区の港は、瀬戸内海航路の重要な中継点として、海運業で栄えていました。この地域は、冬になると、強い西風が吹いて海が荒れるため、漁業ができなくなります。その間、漁師たちは出稼ぎをして生計を立てていましたが、そのような苦しい生活から脱しようと考え、線香作りを始めたのです。
当時、小間物問屋(こまものどんや。髪飾りや化粧品など、小さな日用品を扱っていた店)でもあった田中辰蔵という人物が、線香の産地であった大阪の堺で線香作りを学び、その技術を持ち帰ったことで、淡路島で本格的な線香作りが始まったそうです。
海を荒らしていた強い西風は、乾燥が必須の線香作りにちょうどよいものでした。さらに、冬でも気温が0度以下にならない気候も、凍るともろくなってしまう線香にはうってつけでした。ちなみに、うってつけとは、2枚の板を釘で「打って」「付ける」ことから、ぴったりということを表現する言葉になりました。
こういった経緯で、淡路島ではお香作りが盛んになりました。お香作りにおいて、香りの調合から最後の仕上げまで、すべてを任せられる「香司(こうし)」という専門職もあります。 ちなみに、諸説ありますが「淡路」の語源は、阿波(あわ)国(徳島県)への路(みち)であったことからだといわれています。
お香の製造方法
ここで、一般的なお香の作り方を見てみます。
まず、香りのもとになる白檀やシナモンなどの粉末と、つなぎ(のり材)になる椨粉(たぶこ)を混ぜ合わせます。椨粉とは、タブという樹木の皮を乾燥させ、粉末状にしたもの。水分を加えると粘り気が出ることや、無臭であることから、お香のつなぎとしてよく使われています。
次に、混ぜ合わせたものに水と着色料を入れ、粘土状になるまで練り上げます。工場では、混練機という機械を使って練るのが一般的です。
練り上がった生地は、押し出し機に入れて整形します。細い線状に整形したいときは、巣金(すがね)と呼ばれる、たくさんの小さな穴が空いた金型を使います。
押し出されて整形された生地を板の上に並べ、両端を切って揃えます。このとき、生地を並べる板のことを盆板というので、この両端を切る作業は「盆切り」というそうです。
最後に、お香同士が触れないように並べ直しながら、不良品を除いたあと、乾燥させます。この段階で、仕上がり時の長さに生地をカットすることもあるそうです。もちろん、乾燥すると縮んで長さが変わるので、どれだけ縮むかを考慮して切らなければいけません。長年の経験が求められる作業です。
お香の種類
「線香」と「お香」は何が違うのでしょうか?じつは、線香はお香の一種で、お香のうち、細い線状になっているものが「線香」と呼ばれています。お香にはそのほかにも、粉末状の「抹香(まっこう)」、粉末状のものを
固めた「練香(ねりこう)」、香りのよい木材である「香木(こうぼく)」、粉末にした香料を袋に詰めた「匂香(においこう)」または「匂い袋」などがあります。
ちなみに、マッコウクジラの名前の由来は、一説では「抹香」だといわれています。オスのマッコウクジラの腸の中に、貴重な香料である「龍涎香(りゅうぜんこう)」ができることがあります。この龍涎香が抹香と似た香りであることから、マッコウクジラという名がついたとされています。
「香りで時を届ける」新香のSOZO(ソウゾウ)シリーズ
「春夏秋冬~FOUR SEASONS~」の作り手である、株式会社新香(兵庫県)も「お香は、1本ずつ手作業で『燃える時間』『香りの持続性』『燃焼の安定性』を調整するため、職人の高度な技術や経験が必要です」と言います。
「春夏秋冬~FOUR SEASONS~」は「SOZO(ソウゾウ)シリーズの1つです。SOZOは「想像」と「創造」の2つの意味で名付けられたそうです。
香りの変化で時間の経過を知る「香りのタイマー」というコンセプトで開発され、2024年度「OMOTENASHI Selection」最高金賞、2025年グッドデザイン賞の1つに選ばれています。
SOZOシリーズ開発のきっかけは、1988年の設立から続けてきたなかで「香りに慣れてしまい、途中から感じづらくなる」という課題に向き合ったことだそうです。また「五感を通して自然に時間の移ろいを感じることができたら、心に余白のある時間になる」という発想も背景にあります。
香りのバトンが自然に受け渡されるように、5年かけて理想の設計を追求。特に、調香と燃焼速度のバランスに気を使いました。
パッケージは椿の花をモチーフとし、風呂敷のように開けられる点が特徴です。プレゼントを開けるときのようなワクワク感を少し味わえる、かわいらしいパッケージです。

お香業界の現状と、新香の取り組み
さて、昔から続く産業のほとんどがそうであるように、お香業界もまた、高齢化と担い手不足が課題となっています。
そんななか、新香はSOZOシリーズを作ることで、若い世代や新しい市場へアプローチし、お香業界へ刺激をもたらすことを1つの目標にしています。現在は、新しいSOZOシリーズの開発や、端材の再利用などの持続可能なもの作りにも取り組んでいます。
最後に
SOZOシリーズには「今までのお香とはまったく違う体験ができた」という感想が一番多く寄せられているそうです。
ご存知とは思いますが、同じものでも、違う使い方、違う楽しみ方を発見することができます。さらに、日常にあるものにも、まだ知らない物語(背景)があることが分かります。これらが発見物語が提供したい価値であり、「今さら」お香をお届けした理由です。
ちなみに、この物語を書き終える直前(2025年10月)に、「SOZO」が2025年度グッドデザイン賞に選ばれたという知らせを受けました。新しいコンセプトのお香が、社会的な評価を受けながら広がっていきます。
株式会社新香からのメッセージ
香りには、目には見えないけれど、心を整え、空間を変えてくれる力があります。
SOZOは、そんな香りの力を最大限に引き出し「時の移ろい」を感じる贅沢なひとときをお届けするお香です。
ぜひあなたの暮らしの中で、香りと共に心豊かな時間をお楽しみください。
SOZOは、朝の静かな時間、読書や瞑想中、就寝前のリラックスタイムにもおすすめです。
社内スタッフは昼休憩に使用し、午前の気持ちをリセットし、午後のやる気スイッチをオンにする習慣ができています。
香りが両端で違うSOZOを両端から焚くと、また違った香りが楽しめます。社内スタッフはこれを『贅沢焚き』と呼んでいます。
香りが少し強く感じられる場合は、以下のような工夫でやわらかく香りを楽しんでいただけます。
①焚く場所を広めの空間にする
空気の流れがあるリビングや玄関など、広い場所でお使いいただくと、香りがほどよく拡散し、柔らかく感じられます。
②お香との距離を取る
焚いた場所から少し離れて香りを感じていただくことで、香りがふんわりと広がり、優しく楽しめます。
③窓を少し開けて換気をする
換気しながらお使いいただくことで、香りの強さを和らげつつ、自然な移ろいを感じられます。
お客様それぞれの香りの好みに合わせて、心地よい距離感でお楽しみください。
ご利用方法
必ず陶製の平皿などの不燃性の容器の上に不燃性マットを敷き、火を付けたお香を寝かせて置いてご利用ください。
※木製品の上などで不燃性マットを使ってお香を焚くと、木製品が焦げるときがあります。
マッチ一箱と不燃性マットが付属しています。
念のため、火災報知器近くでのご使用はお控えください。
お香の種類や使用状況によって香りが残る時間は異なります。お部屋や衣類の残り香が気になる場合には、適宜換気を行ってください。
お香は可燃物ですので、周囲に十分に気をつけてください。
おすすめのご利用方法:寝かせて焚くことをおすすめしています。また、空気の流れがある場所では、風上に置いての使用をおすすめしています。強風などにはご注意ください。
基本情報
価格:¥1,650(税込)
内容量:お香スティック:15本
お香スティックサイズ:長さ約70mm×径約2mm
香り:桜(約5分)/ラベンダー(約5分)/金木犀(約5分)/水仙(約5分)
※お香の燃焼時間は目安であり、正確な時間を保証するものではありません。
燃焼時間:約20分
付属品1:マッチ1箱(輸出の場合は付属しません)
付属品2:不燃性マット 1枚(不燃性のプレートや陶器の上でご使用ください)
梱包時の商品総重量:24g
商品パッケージ サイズ:H108 x W118 x D10(mm)
商品パッケージ3辺(縦・横・高さ)の合計:236mm
※ご使用前に必ず取扱説明書をご確認ください。
製造:日本(淡路島)
保存方法:開封後は、以下の方法での保存をおすすめします。
高温多湿を避け、直射日光が当たらない場所に置くことで、香りの劣化や変質を防ぐことができます。
密閉できる袋や容器に入れて保管すると、香りが逃げにくくなり、長く楽しめます。
使用期間の目安:開封後1〜3ヶ月以内を推奨しています。保存状態にもよりますが、時間の経過とともに香りは徐々に抜けていきます。できるだけ早めにご使用いただくと、本来の香りの移ろいをより楽しめます。
A1:エジプト文明、メソポタミア文明、インダス文明、中国(黄河)文明とされます。
A2:香司(こうし)です。
A3:阿波(あわ)国(徳島県)への道であったことからだと言われています。
A4:お香の一種である「抹香」だといわれています。
「春夏秋冬~FOUR SEASONS~」についてのお便りやご質問
「春夏秋冬~FOUR SEASONS~」のご感想やご質問、おすすめのお召し上がり方などをお送りください。
※発見物語のWEBサイトやメールマガジン、弊社発行物などでご紹介させていただくことがあります。ペンネームをご希望の方はペンネームをお書きください。
※その他、弊社へのご質問や発送状況のお問い合わせなどは「お問い合わせ」からお願いいたします。


